天守物語で玉さま降臨! |

こんにちは、梅雨明けしたと思ったらいきなりの暑さですね~、今年は冷夏などと聞いていたような気がしますがどこへやら。さてさて私はここ2年ほど友人の歌舞伎通の友達に連れられ毎月のように歌舞伎を見にいっていますが、今月七月大歌舞伎の玉三郎と海老蔵の天守物語があまりに素晴らしかったのでご報告しておきます。
この世の者ではない美しさ...

泉鏡花の傑作「天守物語」はまさに玉さまはまり役!白鷺城の天守閣に住む異形の姫君の富姫を玉三郎がそして逃がした白鷹を殿の命令で追って命がけ天守閣に登ってきた鷹番の若者を海老蔵が演じます。玉さまの妖しくて気高い美しさはもう写真でもお分かりでしょうけれど、華奢な首筋にのった小さな美しいお顔、柳腰の優雅な物腰の玉さまが舞台に登場したときには場内息を呑むのがわかるほど。 ほお~~。溜息。御歳64歳??理性ではそんな事も頭をよぎりますが、すぐにその美しさに感情の渦に物語に引き込まれます。
妖怪の姫君でもある富姫ですからただ美しいだけではありません。男の生首が大好物、血だらけ生首を白髪の山姥のような老女が富姫に差し出すために清めますが、それがあのお祭りの出店で売ってる吹くとぴろぴろと紙が伸びる笛たありますが、あのぴろぴろの真っ赤な舌で山姥のような老女が生首を清める場面などオドロおどろしい妖しさにも、それを行かせ過ぎない滑稽味のさじ加減が絶妙!おぞましくもおかしいとても直視できないけどやっぱり観たいという好きな場面でした。
清めて差し出された男の生首を満足そうに持ちにっこり嫣然と微笑む玉さまの美しい事といったら。。。時を越えて生きる富姫は儚くもありあだっぽくもあり気高くもあり恐ろしくもあり、という様々な要素をそれは見事に体現しています。なんであの角度で立てるんだ?首や腰の角度がもう立ってるだけで完璧すぎてそれがすでに人間ではないわけですけれど、玉さまとて生身の人間のはず、ならばこれを体現するのに一体どれほどの修練があるのだろうと思うとそのストイックな生き様まで思いがいたりさらに感動してしまいます。
映像など駆使した演出も・・

泉鏡花をライフワークにしているという玉さま、今回天守物語は5年ぶりの上演で七月歌舞伎は昼夜の演出も玉さまで若い役者さんなどや普段地味な努力をしている人達に積極的に声をかけた坐組とのこと。そして歌舞伎の型にこだわらない新しい演出が私にはとっても新鮮でした!
まず富姫の登場は一人で出かけていた富姫が雲にのって天守閣に帰宅するのですが舞台バックが映像が使われていて遠くから雲に乗った富姫が天守閣に雲にのって近づいてくる様が映し出されます。舞台袖に降り立った映像が切れるとそこから富姫が舞台に登場してくるという演出。こういう演出が歌舞伎でされるのを初めてみました。
これは私の大好きなオペラ座の怪人25周年記念の公演のDVDも普段の舞台とは違い映像を駆使したことでより異界の世界が迫力満点で表現されているのを見たときにも思ったのですが歌舞伎の元々の大道具的な舞台演出との対比でもとても面白いとおもいました。
それと驚いたのが最後のカーテンコールがあったことです!実は毎月のように観ているとはいえ歌舞伎が大好き!というわけでもましてや詳しいわけでもないのです。歌舞伎通の友人はドロドロの情念物が好きなこともあり、女の情念ドロドロ系か歌舞伎お得意の義理と人情の板ばさみで30分も40分もああでもないこうでもないと一歩も話が進まないというあれがどうも苦手でいつも「ああ・・やっぱり私は歌舞伎駄目だわ・・」と思いながらも衣装の美しさやたまに豪快で明るい演目や仁左衛門などのオーラがある役者さんの演目に少し救われながら行き続けてるしだいでした。
そんな私は歌舞伎が最終幕が終わると一気に場内が明るくなりみんなそそくさと出口に向かう様子がいつもなんとなく余韻がないなと感じていました。ミュージカルやバレエ、演劇といった西洋的演出に私が慣れすぎてるせいもあるとおもっていたのですが、舞台が終わったときああ、玉さまをもう一度みたい!と思い拍手をしていたらなんと幕があがるではありませんか!海老蔵に手をとられ現れた富姫・・確か3度カーテンコールに答えていたとおみますが舞台の余韻も楽しめて私はとても満足でした。
世界の舞台へ・・・

泉鏡花の原作からして怪奇ロマン的なものが好きな私の趣向にぴったりなんですけれど、これは本当に海外に出したほうがもっと評価されるのではないかと素人的個人的に思います。オペラ座の怪人的人気を博してもおかしくはないのでは。だってオペラ座の地下に隠れ住む異形のファントムと美しい歌姫という設定ともこれ結局共通点があるし、そもそももうラミン様のファントムに負けずとも劣らない玉さまの富姫は世界レベルですよね。義理人情ドロドロは現代的に世界で世界で理解されるかは微妙だとおもいますけれど、映像をつかったり非常に洗練された玉さま演出のこの舞台、世界の度肝を抜くこと間違いなしだとおもいました。
歌舞伎界の難しさと面白さ・・
今回の舞台はそれはチケットを取るのが大変で玉三郎の人気と実力を見せ付ける形です。人間国宝でもあり大活躍の玉三郎ですが、今回のこういった舞台も歌舞伎通の友人から言わせれば「どこが面白いのかがまったくわからない、全然だめ、歌舞伎っていうのは綺麗なところに血の履歴だのなんだかんだが折り重なって紡ぎだされるもの、綺麗なだけだったらハリウッド女優みればいいのよ。終幕だってストンと終わるのが歌舞伎っていうもの。リカさんも歌舞伎を見こんでいったらそれがわかるようになる。本当に歌舞伎通の友達の間では玉三郎は綺麗なお人形でつまらないといわれてるわ」と一刀両断。。あっそう??
歌舞伎はやっぱりその梨園のゲームの型というかルールがわかって初めて面白いといいます。たとえば歌舞伎界の「神位置」は「市川團十郎」と「尾上菊五郎」だそうで時期團十郎は言わずと知れた海老蔵で時期菊五郎は菊之助、富司純子さんの息子さんですね。どんなに芸があってもこの家柄に生まれなければこの名前は継げないわけですが今回のお二人は人気実力ともお名前をつぐのに問題はなさそう。名門に生まれたからといって芸と人気がついてくるわけではないので名前と実力・人気が兼ね備える役者がでてくるというのは奇跡的な事でそれがまた一層梨園の複雑性を盛り上げてる模様・・。
そして女形の頂点は「歌右衛門」。時期歌右衛門は中村福助ですけど襲名発表直後に脳梗塞で倒れて襲名は未定。そうなると玉三郎との関係はどうなるか?ということですがおそらく女形で一番人気は間違いなく玉三郎でしょう。しかしどんなに玉三郎の人気が高かろうがそういった名門に生まれたわけではない玉三郎と比較すると名前と格は歌右衛門が上なわけですから出来る役、立てる舞台も違ってくるという話です。
そして更に人間関係も渦巻く濃い世界の梨園。六代目歌右衛門は人気実力政治力とそろった名優だったということですが三島由紀夫などとも親交があったということで、ある日の舞台で三島由紀夫の後ろの席に座った当時10代だった玉三郎をみて一目で心奪われたらしく「すごい子が現れた!」と書き記したほどだったとか。
そんなこんなで激しく嫉妬した歌右衛門は自分が生きてるうちは玉三郎にはトップの女形だけが踊ることをゆるされる鷺娘やなんやらは絶対躍らせない!とし躍らせなかったとか。。大歌右衛門の死後その大役を引きつぎ精進されてるということらしいです。嫉妬だけじゃないでしょうけれど歌舞伎界さもあらん、と思わせる逸話です。
そういった現実世界の愛想悲喜こもごもも踏まえて客もそのゲームの型にどっぷりはまりその世界まで降り立って楽しむのが歌舞伎、だそうです。女形のお姫様といっても普通に見たらものすごい歳をとりしわやたるみのある白塗りの役者をそのルールにのっとって若い美貌のお姫様に見立てる、というその型を学ぶ所からして初心者でとってもフラットな感覚の私の前に相当な壁が立ちはだかっています。
そういうしがらみというかよっぽどわからないと本当に楽しめない歌舞伎より私はやっぱり玉三郎様が好きですね。そういう歌舞伎界の家柄だのしがらみだのなんだのということを精進で昇華させて人間国宝にまでなりそして多分色々な非難などがある中新たな世界を切り開こうとする玉三郎様の姿がいっそう孤高で美しくみえるわけです。役者はやめて後進の指導と演出というような話もききますがもっともっと役者を続けてほしい。。

最後に最近ちょっとFacebookをやってみてるのでそのとき使った写真を。。(横のお友達は歌舞伎通の友達ではありません、念のため。。)横の玉三郎様の立ち姿をみると私がいかに人間らしいかよくわかります(笑
)立ち姿がやっぱり玉様尋常ではないですね~
シネマ歌舞伎も是非みなくては。。とっても長くなりました。。