新春の「翁」の能舞台 |

こんにちは、青井です。やはりどこの国に行こうと最終的には日本が一番いいなあ・・と感じるわけですが特に今年の1月は和の伝統に触れる機会がたくさんありました。その中でも1月9日に行われた能舞台「翁」と宋偏流お家元によるお茶会は改めて世界に誇る日本の伝統とおもてなしでしたので是非ご紹介させてください。
素敵な「和」はいつもこの人から・・・

新春の「翁」の能舞台は能の中でも特別なので是非ということで去年より席をご用意してくれていたのは、生粋のパリジェンヌマヤさん。室町時代から続く能楽囃子の大倉正之助さんのお弟子さんでもあるマヤさんには和の楽しいお誘いをしていただき、日本人以上に日本語に堪能で外国人ならではの大胆さでいつもその本質的エッセンスを紹介してくれる有り難いお友達です。
「能にして能にあらず・・」

非常に古い歴史をもつ翁は通常の能ではなく能以前からおこなわれていた農耕神事ということでとても儀式的側面が高いそうです。能化した後も古くは天皇の御前で大地の精霊を呼び覚まし、翁の神となった太夫が天下泰平、五穀豊穣を祈る舞をするというもの。奉納であるこの能舞台は観客である私達はあくまでもその場に居合わせただけであり観客のための能ではないためこの儀式を観る場合は静かに場所にはいり静まりかえった中能舞台がおこなわれるのを拝見し場が終われば拍手もなく静かに出て行くという特別な作法ということをあらかじめ教えてもらいました。
舞台は「式三番」ということで露払いで場を清めたあと写真の白式尉(白い翁の面)と黒式尉(黒い翁の面)の2つの舞が捧げられる。衣装も金や色彩も鮮やかな素人目にも非常に格がある素晴らしいものでしーんとした中で鳴り響く小鼓の音に神聖な空気が流れます。
中でも今回三番おきなが野村萬斎さんだったのですが黒い翁の面を舞台上ですすっとつけて踊りを披露されたのですが本当に華があるんですね~緩急を付けたその踊りが切れがあるというか目がひきつけれました。真矢さんもあとで自分が見た三番オキナで一番素晴らしかったとおっしゃってたし、一緒にいったお友達も同じことを言っていました。そしてその大鼓が大倉正之助さん。これがまた打つ姿が一段と凛々しく気とオーラが立ち上ってくる感じ・・・。なんだかこいつは春から縁起がいい~という感じなのです。人間国宝ですものね。。。
しかし・・・こんなに堪能させていただいたにもかかわらず、なぜか唐突にものすごく眠くなりまた突然焦点があうというどこかちがう世界とこちらを行ったりきたり・・。ただたぶんあの雅楽特有のリズムと鼓になにか脳に直接作用するものがあるのだとおもうのだけれどもこれも全員同じ感想でして。。。もう翁、狂言の佐渡狐、羽衣がつづきおおわるのが4時半過ぎだったのですがなぜか心地よいお昼寝後のようなすっきり感が。。本当にあらゆる意味で(笑)夢心地の舞台でした。。
それにしてもさらに贅沢なことにこの公演も年に1日、それもただ13時からのただ1回のみの公演なんですよね。これは能のなかでも特別であるということもあわせて会場は満員です。無粋であることを承知で言えばチケットも6500円。ある意味コンサートなどと比べてもお安いと思うんですよね。そして本当に贅沢。
大倉さんのオーラ

大倉さんのHPはこちらです。HPからのこちらの写真もそうですけど鼓打っている時一度近くで拝見させていただいたことがあるのですが演奏後には額は玉の汗がびっしりとにじむほどでお腹の底から響く掛け声とともに気とオーラを発していられます。
自然体と伝統

こちらは私達の作ってる学校軽井沢インターナショナルスクールのサマーでワークショップをしていただき子供達に指導してくれているところ。こういったワークショップを日本はもちろん世界各国でもう10年も続ける活動をしているそうです。またもともとは鼓は能の舞台での演奏だったわけですが、大倉さんは日本全国、世界各国能舞台に限らず鼓の単独演奏、単独でのパフォーマンスを広く行われているんですね。

すべて分解できる鼓は毎回毎回こうやって組み立てる作業が必要で演奏が終わればまた分解してお道具も休ませる。これはワークショップで鼓を組み立ててる真矢さんですがその日の天候や湿気などで紐の張り方も微妙に変えたりと本当に生きている楽器なんですね。

それぞれおめでたい文様の鼓ですが大事に大事にこうやって分解して保存してお手入れをすることで数百年も使うことができる。もしかしたら秀吉や信長も聞いたかも知れない音だとおもうと本当に不思議な気もちになります。
このバイク野郎はだれ?

鼓とい楽器は構造も演奏方法もとても単純でそれでいて十人十色そのままに打つ人によって本当に音はそれぞれ。どの音が間違っているとか正しいもなくそれぞれがいい音で「調和」しているというお話をワークショップで伺いました。西洋の音階などとはまったく異にする発想ですね。私も打たせてもらいましたけれどこれが難しい。なんというか自分がでてしまうんですね。こういう楽器に室町時代から代々向き合ってるわけでそれは人間も深くなろうかというもの。教育の話から福島の地震の話、モナコでの公演の話などどれも本当に日本だけではなく世界をみている本物のアーティストなんだなあ・・と改めて感じ入りました。
しかもご趣味はバイクなんですよね。。演奏が終わるといつも颯爽とした洋装のスーツ姿でオシャレな大倉さん。なんというかまったく肩に力がはいっていないというか。。こういった方どんどん世界だけじゃなくて日本でももっと紹介していただきたいなあ・・・翁をご一緒させていただいた友人が「紅白歌合戦も韓国の方もいいけど大倉さんとかにも出演していただきたいよね」といっておりましたがほんとGood Idea!もっとも身近に存在していながら実はもっとも私達が知らない宝物かもしれません。世界の人のほうが気がついているみたいです、もったいない。。
お茶会までは話がいきませんでしたね。。こちらはまたの機会に。。