ネイチャー・センス展 in 森美術館 |

先日森美術館で開催中のネイチャー・センス展に伺ってきました。今回はデザイナーとしての枠にとどまらず幅広い分野で活躍中の吉岡徳仁さん、篠田太郎さん、栗林隆さんというアーティスト3人による日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーションというもの。しかしこの企画本当にとっても楽しかった!
突然の雪景色

しかし吉岡徳仁さん、すごいなあ!と感嘆してしまいました。入り口の角を曲がると冷気を感じるこの大きな真っ白い部屋の一番奥に突然の雪景色。わ~!となります。実は吉岡さんのあの有名な椅子とかって私としては?でちょっとわからなかったのですが、今回この作品をみてすごく見せる=魅せる方だなあと思いました。イッセイミヤケのショーウィンドーにディスプレーで初め名前を馳せたと聞いたことがありますがなるほど、すごく納得。多分ショーウィンドーとかって一目見たときのインパクトとかが一番大切で見る人に考えさせない、そしてミニマムで最大限の効果を出す演出だとおもうのですが今回もそれを感じました。
雪の正体は??

これは実は羽毛です。なんと300kgの羽毛をこのクリアな箱の中にいれて時間設定で扇風機のようなもので羽を舞い上げています。そして扇風機が止まるとまるで本物の雪のように羽毛がゆっくり、ゆっくり舞い落ちてくるというもの。舞い上がらない羽毛と落ちてくる羽毛でその景色は刻々と姿を変えてゆきます。

実は入り口で協賛にあの布団の西川さんの名前があったので??と思っていたのですがなるほど、この羽毛で協賛ということですね。最高級の羽毛を提供しているというご説明。シングルの羽毛布団1枚に約1kgの羽毛がはいるのでこれは300枚分ということですね。そして「羽毛布団」とくれば仕事がらもちろん私の目もきらり~んと光るわけですが、この風景どっかでみたことあるよね、と思えば以前羽毛布団の工場に見学にいったときにポーランドなどの現地から送られてきた羽毛をより分けるのにこうい装置を使っているのをみました。つまり風で羽毛を飛ばすと一番最初に落ちるのが重いあまり質のよくない羽でどんどんいい羽毛は軽いので遠くまで飛ばされてゆきます。それを3つ4つの部屋ごとにわけて羽毛の選抜をおこなうんですね。一番最後のものは細かいゴミなどが飛ばされるのでその一つ手前が最上級の羽毛布団に使われるものです。最上級の羽毛であればシングルで0.8kもいれれば十分なかさがでて軽くて暖かいわけですね。確かにこの作品にはいっているものは真っ白でいつまでも空中にふわふわと浮いているとっても上質なものでした。変なところで仕事もモードになってしまいました(笑)
光化ガラスの作品群の圧倒的存在感

こちらも吉岡さんの作品ですが透明度が普通のガラスよりもはるかに高いという光化ガラスを使った作品。トップの写真をみていただくとわかりますが相当長いテーブルなのに横から覗くと向こうに立つ人の顔もくっきり見えます。こちらは滝をイメージした作品で表面が小波だった水面のよう。ほんとフォトジェニックな作品でもありますよね。
表面はひんやり。。。らしい

子供だけは触ってもいいという今回のこの作品。普通のガラスより冷たいという話だったけれど。。?作品の下にもぐるとまるで水中にいるような感じにみえる。脚のシルバーとあいまって水が持つ透明感や躍動感やぬらりとした重さまで感じさせる圧倒的な存在感をもつ作品でした。
今回No.1の面白さ、雪の森林と地下とその境界線


栗本隆さんという長らくドイツに滞在していたアーティストの作品。「境界線」をテーマに色々な作品を発表されているようで今回のこちらは地面を境界面とする森林の地上と地下の世界を再現。部屋に入ると和紙で作られた地底。本当にねずみがモグラにでもなった気分で高低差がある地底をすすむと所どころに穴があいていて地上が覗ける。
野ねずみかうさぎになった気分

穴から子供達が所々で顔を出してはしゃいでいる。顔を出す位置によってこの高低差が見える景色を一変する。つまり動物からみると頭を出した穴の位置によってはまったく全体が見えない場合もあって人間目線でみているよりずっとこの高低差が重要になってくる。獲物や敵の見え方が多分違ってくるから。しかしモグラたたきのモグラも気の毒だな・・これで頭を出したら突然たたかれたりするわけだから。。などとおもおもったりする。この樹もすべて和紙で作られているということで地面もすべて和紙を貼り付けて構成されていて質感もとってもリアル。製作に3ヶ月かかっているとか。。。発想も面白いですけれど真っ向勝負の作品ですね。手間も時間も存分にかえた大作。

火山のような作品は?

水面(境界線)から上の見えている部分は実は全体のほんの一部なんじゃないか?という問いかけるようなこの作品。ガラス面から上の島は実は世界地図になっているそう。面白いですね、同じく栗源さんの作品。
東福寺の庭に着想を得た作品「銀河」

篠田さんの京都のお庭に着想を得たというこちらの作品はなんとバスロマンで白濁させているというもの。時間設定で上から水滴が落ちてきて一瞬その波紋が北斗七星などの星座を形作る。ほんの一瞬で消えてしまうのでめを凝らして水面を見つめる。この白濁を出すために色々試した結果バスロマンが一番よかったとか。部屋中バスロマンの香りが立ち込めていました。

篠田さんの映像の作品
展示の最後まで

展示の最後には展示会のテーマについての考察を深めるためにアカデミーヒルズ六本木ライブラリーとの共同で「ネイチャーブックラウンジ」が設けられていました。これは廃校になった校舎で実際使われていた机とか木材をもってきて立体的に構成されたラウンジで様々なコーナーをつくっていてとっても面白かった。最後まで気がきいています。
気が利いているといえば実は今回森美術館のパブリックプログラム担当の方にお願いして子供向けの解説者をつけていただいて、作品を見て回りました。森美術館には事前に予約してお願いすると子供向けに専門の解説者を付けて作品を一緒にまわってくれるというサービスがあります。以前コルビジェ展の時も利用しましたが一家族1000円というお値段でとてもよかったので、で今回は3家族ということでお願いしました。子供にはともすると難しい現代美術もこうやって作品の背景など説明してもらえるとぐっと親しみもわくようです。
他の美術館でもこういうサービスがあるのかはわかりませんがとってもいいサービスだとおもいます。もし機会があればご利用してみられるとさらにいっそう美術館が面白いかも。ちなみにネイチャーセンス展は11月7日までです。
おまけ

先月まで新国立美術館で開催されていたオルセー展。最終日2日間うかがいましたがほんとすごい人。70万人の来場者を越えたということでした。こちら入場待ち90分と出ていましたが10時開場が通常ですが開場まえから人が並びはじめているため9時半開場に切り上げられていました。なので9時半くらいにいくと外で並ぶこともなく30分程度建物内で並ぶだけで2日とも入場できました。裏技(?)後紹介。オルセーもほんと素晴らしかった。